錦糸町ビューティークリニック 医師ブログ

墨田区錦糸町にある美容皮膚科クリニック医師の徒然話

新型コロナウイルスと高濃度ビタミンC点滴

興味深い記事が現代ビジネスに掲載されていましたので、少し触れてみたいと思います。

上海市新型コロナウイルス治療に実践する「ビタミンC」点滴の実力

全文はhttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/71103

記事では中国武漢の症例や上海市当局の見解を紹介し、大量のビタミンCの摂取が、新型コロナウイルスの予防や治療に役立つ可能性を指摘しています。ただし、筆者は従来からビタミンCの大量摂取を勧める活動をされている方のようですので、その点をふまえて読む必要はあると思います。

上海市は、COVID-19患者の治療にビタミンCの点滴(IVC療法)を認めた。ビタミンCの量は症状の重さによって変わるが、目安は、体重1kg1日あたり50~200mgである。成人体重を70kgとすれば、この容量は1日約3,500~14,000mgになる。点滴は非常に有効である。なぜなら、ビタミンCの効果は点滴するほうが経口摂取するよりも少なくとも10倍は高いからである。 

記事中では、ほかに経口でのビタミンC大量摂取でもコロナに対する予防効果があったと推測される症例も紹介されていますが、上海市は点滴によるビタミンC摂取を推奨しているようですね。どのような薬でも経口投与と点滴(注射)投与では、一般的に同じ量でも効果に大きな差があります。経口の場合、消化吸収の過程である程度ロスがあるため、摂取した量すべてが体内に吸収されるわけではないですし、血中濃度の上昇度合も緩やかになるからです。また、同じ薬を同じ方法で摂取する場合でも、摂取量によって効果の出かたに差が出ます。経口であれ点滴であれ、「大量に」摂取することに何らかの意義がある可能性があります。

ビタミンCは普段から健康維持のために毎日服用している方も多いでしょうが、この記事を読むと、コロナが落ち着くまでしばらく服用量を普段より増やすという選択肢も考えられますね。ビタミンCは水溶性ビタミンなので過剰摂取はまず問題になりませんし、様々なクリニックで行われている高濃度ビタミンC点滴は15000mgから100000mgという莫大な量のビタミンCを1時間から2時間程度で投与しますが、副作用はまずありません。経口摂取によるビタミンCを多少増やしたところで副作用についてはまず心配しなくてよいでしょう。気軽に試せるコロナ予防方法として試してみてもよさそうです。

なお、記事中では、

ウイルス感染症に立ち向かう際の基本は、人体の抗酸化力を最大にすること、感染したら症状を最小にするために免疫力を高めることである。感染を予防するには1日3,000~9,000mgのビタミンCを数回にわけて経口摂取するとよい。これが「経口メガドース療法」である。

と記載されています。

クリニックでよく処方されるシナールという錠剤であれば1錠あたり200mgのビタミンCが含まれていますから、この「経口メガドース療法」に従えば、1日15錠から45錠を飲むことになります。1回1錠、1日3回で1日3錠飲むのが通常量ですから、その5倍から15倍の量を飲むことになります。シナールにはパントテン酸カルシウムというビタミンも含まれていますが、ごく少量ですので、1日15錠から45錠程度飲むぐらいでは特別な副作用は心配しなくても良いでしょう。

ところで、当院でも高濃度ビタミンC点滴を行っていますが、投与量は25000mgと50000mg(25gと50g)の2種類です。容量的には業界標準だと思いますが、これでも記事中の上海市の推奨する容量を大幅に超えています。高濃度ビタミンC点滴は美白などの美容目的だけでなく、抗炎症作用や免疫力強化作用、がんの代替治療などの効果を求めて平時から広く行われている治療です。なお、基本的に安全な治療ですが、G6PD欠損症という遺伝的素因がある方と腎機能が悪い方、妊娠中の方は受けられません。G6PD欠損症については、日本人ではかなりまれ(人口の0.1%以下)ですが、ごく稀にいらっしゃいますし、この疾患があると高濃度ビタミンCにより血球が破壊されるおそれがあるので、ビタミンC点滴を受ける前に必ずG6PD活性の有無を検査しておく必要があります。当院では、他の医療機関で25g以上の高濃度ビタミンC点滴を受けていた方を除き、点滴前に必ずこの検査を受けていただいています。検査はごく少量の血液を採取するもので、数日で結果が出ます。当院の高濃度ビタミンCについては改めてまたご紹介したいと思います。

 

Kinshicho Beauty Clinic 副院長:遠藤栞

▼経歴
2017年浜松医科大学卒業
2019年Kinshicho Beauty Clinic勤務
2023年東京都立墨東病院麻酔科レジデント終了
麻酔科専門医取得

株式会社メドフリー代表取締役社長
運営メディア | すとれすふりードクター
編集メディア | まだ病棟で消耗してるの